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海賊課と特殊戦、海賊とジャムが重なって見える。

正確には海賊課から見る海賊は、ジャムに似ている、と言うべきか。海賊はジャムとは違い、実体と個人格を持つ存在だ。

特殊戦の相手(あえて敵とは書かない)はジャム。ジャムは異星体。海賊課内の理解不能な異星体がアプロである。

アプロの外観は黒猫で、行動も気まぐれな猫のようだ。そして人語を解し自らも喋る。だがその行動原理は謎だ、と皆が言う。

もしかしたら人間とは異なる世界を見ている可能性もある。しかし、逆も考えられる。

つまり外見が人間ではなく、行動が奇矯で、今だ知られざる能力があるだけの、それだけの存在かもしれないのだ。アプロの行動の裏を考えようとせず、そのまま見れば、そうなる。

アプロを理解不能な異生物と見なすのは、単なる差別感情かもしれないのだ。

もちろんこれも一つの解釈に過ぎない。実際にアプロはジャムと同じく、独自のロジックで動いているのかもしれない。

だが仮に、アプロの行動原理が人間のそれと異なっていたとしても、それを人間が観測したり理解するのが不可能である以上、アプロは人語を解し、人間と行動を共にする存在、と見なすしかないのであろう。

意識があるように見えるプログラムは、意識がある存在と見分けがつかない。
ジャムとは神林長平の「雪風」シリーズに出て来る異星体である。こいつらは南極の「通路」を通って地球に攻撃を仕掛けてきた。

でもシリーズを読み進めると、実はそれより以前から地球に侵入していたのでは、という気にもなる。2001年のモノリスは、ジャムかもしれない。

地球人はジャムによって知性化されたのか? ジャムが機械知性だといのは偽装で、地球はすでにジャムの支配下にあるのではないか? 地球人はコンピュータを作るよう、ジャムに誘導されていたのではないか?

もちろん神林がそう書いているわけではない。

あるいは、ジャムは情報そのものなのかもしれない。あたかもミームのように。ジャムミームに触れた存在は、ジャムに汚染されジャムとして振る舞うようになる。

意見が合わないネットウヨクはジャムなのかもしれない。もしかしたら、議員にもジャムが紛れ込んでいるのかも。

僕は人格を感じない発言者をレプリカントと呼んでいるが、わけの分からない全体思想や人権思想皆無な発言者*はジャムと呼ぶ方が適切かもしれない。

*ただ、ジャムが話の分からない連中には描かれていないのが気になるところである。むしろ一部のネット人の方が、よほど話が通じない気がする(笑い。
神林長平
ハヤカワ文庫「プリズム」収録

この本の前半は読み進めるのがつらかった。描写が入り混じり、何が事実で何が幻想かよく分からず、骨が折れた。ようやく面白くなるのは操色師が登場する「ヴァーミリオン」に至ってからである。

今日表題に選んだ「パズラー」は本連作のクライマックスである。不思議な遊園地SOWランド(センス・オブ・ワンダーランド?)における追跡劇。と書くと陳腐だが、その陳腐さを越えたところに神林の凄さがある。

SOWランドは広大なロールプレイ空間で、客は園内通貨「円」を買い、「東京」でのくらしを疑似体験する。

現実と幻想の垣根を軽々と飛び越える、神林ならではの舞台装置だ。

思えばこの手の設定は神林のメインテーマとも言えるもので、古くは「あなたの魂に安らぎあれ」から連綿と書き継がれている。

「パズラー」の面白さは、仮想都市SOWランドの中に、さらに入れ子のようにおもちゃの都市を設定したことであろう。もう、何が現実なのかさっぱり分からない。SOWランドの外は、上空に浮かぶ制御体に管理される"現実世界"。ところがここも、連作を読めば判るように狂っている。


狂気の連鎖。狂気の入れ子。「過負荷都市」とは異なり、真の恐怖がここにある。
神林長平
ハヤカワ文庫

僕はこのシリーズを読み直しているところで、現在、第二弾の「グッドラック」の途中です。

さて、この第一作は美しくも悲しい物語の連作です。第二弾以降、この特徴は薄くなります。

実験機開発に関わる「騎士の価値を問うな」「全系統異常なし」や、ジャムに乗っ取られた基地を探索する「インディアン・サマー」は、誰もが認める名編でしょう。「非人間的」な特殊戦と、人間味のあるキャラクタの対比が興味深い。

人間味あるキャラクタと言えば、滑走路の除雪作業員の天田少尉が気になります。対ジャム戦の真の意味が描かれた「フェアリー・冬」に登場しますが、この章は恐ろしい話です。僕は大好きですが、読むたびにぞっとします。

そして、最終章の「スーパーフェニックス」にいたり、読者はさらなる恐怖に襲われるですね。この戦いは一体なんなんだ? ジャムは何を考えているのだ? 雪風とは?

表紙絵は、昔の横山宏の手によるものの方が、この物語には似合っている気がします。長谷川正治の絵は、「グッドラック」以後の作品にはいいのですが、これには今ひとつどうかな。
神林長平
早川文庫

時空の全事象を制御するクォードラムは、現実をうまく創れない人間が増えたことで過負荷状態に陥ってしまったというのだ。

都市制御体と聞くと「プリズム」みたいなものを連想しますが、本書はジュブナイルです。神林が得意とする現実崩壊感覚を、おもしろおかしく書いていて好感が持てます。

アクションも風景描写も、他人ごとのような余裕のある会話も、妙に浮世離れしていてそこも面白い。

これがもうすこしシリアスになると「完璧な涙」になるのでしょうねー。あるいは「完璧な涙」の空白の300年が、「過負荷都市」なのかもしれません。

表面を読めばおちゃらけているし、奥を探ろうと思うとそれはそれで面白いし、読者をからめとる神林空間で遊ぶには、最適な本です。

神林作品になじみのない方でも楽しく読めるのではないかな。
神林長平
早川文庫

クルマは好きですか?
この本のタイトルは、まさにクルマのことです。
自分の理想のクルマを設計する老人。遠未来、その設計図を元にクルマを制作する翼人。彼らは共に、魂を震わせるガジェットとしてのクルマに情熱を傾けるのです。

いや、この表現は雑かな。彼らにとって、クルマは単なるガジェットではなく、魂を揺さぶるなにかです。

この本はクルマを核にした思弁小説です。意識とはなにか、魂とは、クルマとは。一冊まるまるそんな議論を書いてしまう、じつに過激な小説なのです。また、表紙にねこが描かれているように、編中にもちゃんとねこが登場します。

僕が思うに、このねこはクルマと同様、自由の象徴ですね。

軽いようでいて何かを考えさせる、じつに興味深い本です。

おまけ。僕の魂を震わせるボーカロイド動画。
ドライブ!Drive Me Flat



SFマガジンにコミック版が連載中。神林長平の作品を東城和実がマンガ化している。「雪風」の多田由美さんもそうだったのだけど、なぜこうアンニュい絵柄になるのだろうか? 大人向けを意識しているのか、東城さんのタッチなのか分からないけど。

僕は「完璧な涙」は大好きなんですよねー。ずいぶん昔の作品なのに、いまごろマンガ化されると云うのは、人気があるのだろうか? そういえば「神林長平トリビュート」にも選ばれていた。

世界全体が廃墟と化した時代。時間も空間も因果律もぐっちゃぐちゃになった地球で、謎の戦車に追われる男女。SF好きにも幻想文学好きにもたまらない設定ですよね。神林はこういう作品が本当にうまい。

中でも、白昼夢のような「墓から墓へ」の章が特に好きです。


それはそうと、ジャムの正体を知りたいぞ、って話題ずれ過ぎ>自分。