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【ようきなぎゃんぐのーにちじょうとーしゅうげき】

(1)
伊坂幸太郎 著
祥伝社文庫 刊

(2)
これで当ブログに、「陽気なギャング」のタイトルが三つ並びました。奇妙な特技を持った4人組のギャングシリーズ第二弾。今回は、それぞれの特技を生かした短編風の出だしから、一気にギャング仕事へとなだれこみます。

(3)
前作におとらず、トリッキーで痛快なピカレスクコメディです。響野の口先はさらになめらかに、伊坂幸太郎の詭弁もますます冴え渡ります。

(4)
キャラクタ小説でもあるし、でもストーリーはきっちりとしてるし、文句なしの娯楽作品です。前作に続いて、時間を置かずに読むと楽しめます。
「ーの続きを書いてほしいのですが、ここで止まってしまっているのが何とも残念です」

(5)
巻末にはボーナス短編が収録されているのも楽しい。
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伊坂幸太郎
祥伝社文庫

奇妙な特技を持った4人組がギャング稼業に精を出します。
脇役で出てくる、発明狂の田中とか、響野の奥さん祥子さんはいいなあ。

全編に気の利きすぎた会話があふれていて、ちょっとうるさくも感じますが慣れてくると心地いい。響野の嘘八百口先八丁が本当に面白い。

各章の冒頭の、辞書風のへんてこな警句(?)もしゃれている。

ギャングして奪った金を、横取りされちゃうんですよ。そいつらにやり返すんですが、じつに痛快至極。映画的手法で描かれたピカレスクコメディ。

映画では割愛されていたキャラクタも登場するし、ストーリーはもっと入り組んでいます。ふたつを比べると、伊坂幸太郎の小説の上手さと、前田哲監督の構成の上手さを感じます。それぞれいいんだな。

はじめから終わりまで、伏線だらけです。意外なことまでもちろん伏線なので、お見逃しなきよう。
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原作/伊坂幸太郎
監督:前田哲
佐藤浩市、鈴木京香、大沢たかお、松田翔太、他出演

じつに陽気でバカで。いい映画じゃないか。

4人組が、それぞれの持つ奇妙な特技を生かしてギャング稼業に精を出すのですが、その特技がバカっぽい。演説の達人。嘘を見破る人。完璧な体内時計。天才的なスリ。なにそれ、ってなもんです。

とくに体内時計の人(雪子/鈴木京香)は運転の達人でもあり、CGを駆使したカーチェイスが楽しめます。ここらへんは実写のルパン三世みたいで愉快痛快。わざとCGっぽく安っぽくしてるんだろうな。

佐藤浩市が役を当てている、演説名人の響野がじつにいい。僕はこの人は、最近の競馬のCMでしか知らないので、全然違う役者ぶりに感心しました。

ストーリーが唐突だったり、あきれるような演出もありますが、でも僕は充分に楽しみました。1時間半で終わるのも好感が持てます。大体、最近の映画は長いんだよな。

ふたつクイズを出します。
ゾウを冷蔵庫に入れる、三つの条件を示しなさい。
キリンを冷蔵庫に入れる、四つの条件を示しなさい。
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昔からよく言われることですね。「火星年代記」や「都市」はその傑作でしょう。前に紹介した「アイヴィリー」だって、一種の年代記です。レズニックには他にも、「キリンヤガ」とか「パラダイス」といった年代記の傑作があります。

「われはロボット」とか、「火星夜想曲」も年代記です。

ハインラインに限らず、未来史を設定する作家はたくさんいます。人類補完機構だって、年表があります。日本には「航空宇宙軍史」があります。おなじ世界背景を使い回せるので便利だし、作品に深みも出るのでしょう。

僕は上に挙げた中で、ハインラインとスミスはほとんど読んでいませんが、他の作品はみな大好きです。

ところで、カーテンコールのように他の作品のキャラクタがふと出てくるとつい、にやっとしてしまうのは何故でしょうか? 伊坂幸太郎作品にはこれが多いですよね。
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伊坂幸太郎
新潮社

首相がパレードの最中に、殺される。
犯人と名指しされた青柳雅春の逃亡劇。

これ、ものすごく面白いですよ。読んでない方は是非読むべし。

かなり内容に触れています。


皆さんご存知でしょうが、青柳君はえん罪です。やってません。無実の人間を権力が狩りたてる恐怖のドラマです。

ワイドショーは無批判に青柳犯人説を採用し、番組中で大々的に情報提供を呼びかけるし、警察が「青柳は以前、花火工場でバイトをしていた」と言うとすぐにその工場に押し掛け、工場主を問いつめます。また、実家にも詰めかけ、父親を取り囲んで「責任が」とかなんとか勝手な事を騒ぎ立てます。

警察も負けてはいません。社会に混乱をきたすのを承知で主要幹線道路を封鎖し、青柳君を封じ込めようとします。人格の存在しない殺人マシン小鳩沢を投入し、問答無用で仕留めようとします。

ここに出てくるのが、もう一人のサイコキラー、キルオ君です。彼は気まぐれに青柳君を助けてくれる、じつにいい子です。隠れ家や情報の提供、小鳩沢からの救出、整形科医との仲介。キルオくんがいなければ青柳君は助からなかったでしょう。

この物語はサスペンスフルですが、むしろ人情ドラマです。中でも大活躍をするのは昔の彼女、樋口さんです。映画*では竹内結子が好演していましたが、原作の樋口さんもタフでかわいくて素敵です。青柳君とは一度も顔を合わせないのですが、お互いの行動が分かるのか、ばっちりと行動をサポートします。

青柳君はひどい目に遭ったけれども、結局まわりの人に助けてもらってどうにか逃げ延びました。そういう話です。甘ったるい。でも面白いんですよねー。


*もうじきDVDが出るのだ。買わなきゃ。
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伊坂幸太郎
新潮文庫

秘密ちゃん

この作品は伊坂幸太郎の作品群の中でも、とりわけ幻想性が高いですよね。しゃべるカカシ、嘘しか言わない画家、殺人者の桜、太りすぎて動けなくなったウサギさん、悪意のかたまり城山。登場人物がみなどこかおかしい。

そしてその舞台も、江戸時代からこちら、外界から隔絶されている孤島の萩島です。そのくせ何故か電気が通っている不思議なところです。

この作品は伊坂幸太郎ワールドの出発点です。伊坂ワールドはみなどこかでつながっていてますが、その始まりが幻想の島であったことは特筆するべきかもしれません。

つまり、この作品の主人公、伊藤は萩島に行き、現実世界から離れてパラレルワールドに迷い込んだのです。以下の作品は全て、パラレルワールドが舞台となったわけですね。

始まりが幻想世界ですから以下の作品もその幻想の影響を受けます。神様のレシピにほんの少しの変更がなされ、その結果、以後の歴史は大きく変容することになったわけです。

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ともに伊坂幸太郎の作中人物です。小鳩沢は「ゴールデンスランバー」(新潮社)、城山は「オーデュボンの祈り」(新潮文庫)。

===以下、両作品の内容に触れています===

彼らは両作品のダークキャラクターです。

両者ともに鬼畜のような人物なのですが、決定的に異なるのは人間性の有無でしょうか。城山は他者に対する悪意を持ち、加虐的興味を満足させるために悪を行います。カッターの刃が刺さったハムを犬に与えたり、仲の良い二人組のうち一人を殺傷したり、麻薬中毒にしたり、犯したり。
城山は人間だからもつ悪意を具現化した人物です。

対して小鳩沢には人間味がありません。おそらく彼は、他者を人間としても物体としても認識していません。現実世界に対するリアルを感じていないんでしょうね。ドラクエで遊ぶ人が、スライムの生命に対して関心を持たないのと似ています。彼の中に現実は存在しません。小鳩沢は異なる世界に棲むロボットです。

どちらも怖いのですが、僕は城山に対してより恐怖と嫌悪を感じます。自分の中にもある他者に対する悪意を極限まで追求すると城山が現れるような気がするのです。歪んだ鏡で自分自身の心の奥底を写してしまったような、と言ってもいいでしょう。

それはそうと、キルオ君はいい子だね。

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