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「東方見聞録」を読むとモンゴル帝国の広大さを実感する。なにしろ西ヨーロッパとインド、北方ロシア以外のユーラシアがモンゴル帝国だったのだから。

モンゴル帝国と一言で言っても、いくつかの国に分かれていて、ゆるやかな連合国家だったようだ。一番なじみがあるのはクビライの元であるけれども、イル・カン国はイスラム圏、キプチャク・カン国は東欧、と、本当に広大な版図を誇っていたわけだ。

元は中国中原なので、歴代中華王朝と同列に考えられるけれども、その他の国はどうだったのであろうか? どれも広大な領土を持つ大帝国だったのだ。

興味がわいたので調べたいと思っている。表題の「幻想のモンゴル帝国」は、僕の無知の証である。こんど図書館に行こう。
マルコ・ポーロ
平凡社ライブラリー

マルコ・ポーロ(1254-1324)
ヴェニスの貿易商人の息子として生まれ、1270年、父らとともに東方へ旅立つ。以後、元朝に仕えた17年を含め、26年にわたりユーラシア大陸を旅行。帰国後、ジェノアとの交戦に従軍し捕虜となり、その間に「東方見聞録」を口述した。


いやはや数奇な人生です。
各地の産物や気候風土を延々と語る、わりあい退屈な出だしを我慢して読んでゆくと、第3章で俄然面白くなります。ここは元朝の内部事情について語っているところなんですが、まあ王さんってのはどこでも同じだな、と思う次第。

杭州への旅が圧巻。有りあまる富で栄えている地方で、まさにこの世の楽園が描き出されます。

各地の風習を語る際、まずそこの住民の宗教が説明されるんですが、キリスト教やイスラム教まで入っているのが面白いですね。モンゴル帝国はアジア、ユーラシアにまたがる大帝国で、それこそ西ヨーロッパとインド以外はモンゴルだったわけです。なに教徒がいても不思議じゃない。

仏教が偶像教徒と書かれているのも興味深い。キリスト教もイエスさんの磔刑像を拝むんじゃないの?

他にもアラビアンナイトと同じ話や、有名な山の老人(アサシン暗殺者)も載っていて興味は尽きません。後半、トルコ地方の過去の戦争について語るのですが、同じ描写が繰り返されたり、王の系譜だったり。幻想的で神話的な趣きを感じます。

子供の頃に学研世界の偉人マンガで読んだ「マルコ・ポーロ」伝は、「東方見聞録」に忠実だったのだなあ、と関心している次第です。
イタロ・カルヴィーノ
河出文庫

マルコ・ポーロものはいくつか紹介してきたが*、いよいよ本丸に到達した。古くからの幻想文学ファンには「マルコ・ポーロの見えない都市」のタイトルで親しまれている本である。この本の数秘学的な奇妙な仕掛けは、解説で詳しく述べられているのでここでは触れない。

マルコがハーンに語る異国の都市。語られるのはあくまでも都市であり、途中の旅は省略されている。時代がすっかりと無視されて、レーダー用のアンテナやピアノ、アルミニウムなどの単語が現れる。

ハーンの帝国が時空を超えて展開しているのか、マルコの幻視が超越しているのか。おそらくそのどちらでもありどちらでもないのだろう。

どこの言葉かも分からない名前の都市が次々と現れては消えてゆく。解説では、読者から訳者あての手紙としてフーガ形式に言及していたが、あるいはバッハのシャコンヌでもいいかもしれない。

この本を読んでいて連想するのが、山尾悠子の「夢の棲む街」とライトマンの「アインシュタインの夢」である。幻想は幻想を呼ぶ。

*マルコ・ポーロは幻想世界の住人である。当ブログに登場したのは以下の4冊。今後も増えるかもしれない。タグにした方が良いのかな?
「惑星P13の秘密」
「百万のマルコ」
「安徳天皇漂海記」
「廃帝奇譚」
宇月原晴明
中公文庫

遠く異朝をとぶらえば
近く本朝をうかがうに

廃帝、と云う言葉にロマンを感じる。廃された帝。ちゃいされた帝王のことである。廃太子の言葉もある。皇太子がちゃいされた状態のことである。

ロマンなんて言っていられるのは僕が部外者だからであり、本人にとってははらわたが煮えくり返る思いであろう。実際、本書終章の後鳥羽院は日本の大魔王として有名である。恨みのかたまりだ。

再びこちら側に視線を移せば、だからこそ面白い題材と云うことになる。うらみも悪意も感情もない、安穏とした人物は、まったく魅力に欠ける。こう云う人間はサイコキラーにされるのが、小説の作法である(でまかせ。偏見)。

マルコ・ポーロの遺物を軸に、中国、日本の悲運の帝の物語。美しくも惨めに滅びてゆくあまたの王朝。これは先だって紹介した「安徳天皇漂海記」に連なる作品である。続けて読むと、面白さが倍増する。
宇月原晴明
中央公論社

悲劇の壇ノ浦から
陰謀渦巻く鎌倉
世界帝国元
滅び行く南宋の地へ

海を越え、
時を越えて紡がれる
幻想の一大叙事詩

反転

これ面白いですよ。前半の老人語りは一見退屈ですが、後半のマルコポーロ編は実にいい。これは前半が後半に取り込まれる一種の枠物語なのです。おぼろげな記憶にある前半のモチーフが目眩を起こすほど不思議に絡み合い、ほどけつつまた絡まりつつ、いろいろと分からないまま終わります。

そして、タイトルから連想されるのは当然「高丘親王航海記」ですよね。澁澤龍彦の名著です。宇月原のあとがきでも言及されているし、篇中にも高丘親王は登場します。時代が違うのに? それこそがアナクロリズム。

マルコポーロが異国の町を語る場面があるのですが、そこはまさしくカルヴィーノの「見えない都市」そのもの。まったく愉快痛快です。

創元推理文庫
柳広司

おなじみマルコ・ポーロがジェノヴァの牢獄で、牢仲間に語るほら話。ジパングで黄金を手に入れる方法や、山の老人との対決など、どこかで聞いたことのあるポーロ伝説を、ミステリとして騙る、愉快な本。

アシモフの「黒後家蜘蛛の会」のように、硬派なミステリというよりもとんちとかクイズみたいな話も多いが、この形式の短編集ならそれも当然であろう。アジア各地のエキゾチックな光景を無責任に展開する、旅ミステリでもある。

もちろん、マルコ・ポーロはほら吹きなのでここで描かれる異国はみな嘘っぽいことは当然である(笑い。

舞台はあくまでジェノヴァの牢。一種の「クルミの中の世界」とも言える。
二台の壊れたロボットのための
愛と哀しみに満ちた世界文学


高橋源一郎(角川文庫)の著書。

架空の本の断片集。これらは、ロボットに読ませるために適当に収集されたものの、風呂のたき付けにも使われるので断片しか残っていないのである。

紹介される本は多岐にわたる。

則巻千兵衛の未発表発明品目録。
マルコポーロの東方見聞録偽書断片。
世界の雑誌カタログ。
失われた高貴な職業百科。
野球博物館新着図書リスト
古代ギリシャ哲学者断片集
etc

いかにもありそうなものもあれば、どう考えてもガセだろうと云う本もある。だが、単品では本物っぽいタイトルも、嘘っぽい本に囲まれると偽物みたいに見えてくるから面白い。

タイトルだけではなく、内容も百花繚乱。ここにはSF、ミステリ、カタログ、ナンセンス、ポルノ、幻想文学、哲学、鬼畜文学、などなどあらゆるジャンルの断片がある。しかも、どいつもこいつも嘘くさい。巽孝之は偽物そっくりの偽物と評していた。

正直に言って、かなりけったくその悪い描写もあり、良識ある方には勧められない。寄書ではある。