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ダン・シモンズ
早川書房

じつに美しいSFである。聖地に赴く巡礼の語る謎に満ちた物語。それが「ハイペリオン」の本編である。エキゾチックな異星描写と相まって夢幻の世界が現出する。

司祭の語る天涯魔境や探偵の語るサイバーパンクが僕は好きで好きで。それに比べると戦士や学者はその次くらいだ(あくまでも僕の好みで、です)。

また僕は、巡礼たちの乗る、山脈を横断する長大なロープウエイが大好きだ。場面を想像するとくらくらするのである。

テュス河とグランドコンコースも大好きなモチーフである。転移ゲートでつながれた大河と大通り。もっともっと、ここの描写を読みたいと思ったものだ。

かように、ここで描写される未来都市や異境の風景は、SFファンなら読みたかった場面が満載である。エバンゲリオンが過去のSF名場面集であるように、「ハイペリオン」もそうなのである。

分厚いけれどもぜひ「エンデュミオンの覚醒」まで、4冊続けて読んで欲しい、傑作。
ダン・シモンズ
早川書房

「エンディミオン」の続編。これはアシモフの「ファウンデーションの誕生」と同じで、長くシリーズにつきあってきた読者へのボーナストラックでもある。

この巻で明かされるテクノコアの野望や聖十字架の正体は、非常に気になるところ。転移装置やFATラインの仕組みなど、SF読者なら背景と受け取る部分も、実は重要なファクターなのだ。(転移装置については「ハイペリオンの没落」で謎が解かれているけど、ここでもうひとひねりあるのです)


このシリーズを再読する時には、「エンディミオン」二部作を先に読み、その後で「ハイペリオン」「没落」と読み進めた方が面白いと思っている。その方が、作者の仕掛けに目が届く気がする。

それはそうと、前作の「エンデュミオン」とこの本は、買ったはずのハードカバーが見つからない。引っ越しの時にどこかに消えてしまったようだ。実家にもないし、どこに行ったのだ?! 僕は文庫を買い直して読んだのだった。

そのうちこの作品について、ネタバレ満々の記事を書きます。大好きです >ハイペリオンシリーズ
ダン・シモンズ
早川書房

ど真ん中のポスト・ホロコーストストーリーである。「ハイペリオン」で描かれた自由社会は壊滅し、保守キリスト教カルトであるパスクに支配された暗黒世界が舞台。ハイペリオン出身の自由主義者エンディミオンと、前作の巡礼の一人、レイチェルの娘アイネイアーの遍歴を楽しく綴っている。

彼らは旧ウェブを流れていたテュス河をイカダで下ってゆく。テュス河とは各惑星の河を転移ゲートで繋いだもので、船で下ってゆくだけで色々な星を巡れるのだ。このシリーズ中で、最も美しいモチーフだと思う。

シュライクも前作から続けて出現する。

しかしなにより、デ・ソヤ神父大佐こそ、この物語の真の主人公と言うべきかもしれない。エンデュミオンを追いかける彼は、じつにカッコいい。僕は大ファンなのである。

未読の方はぜひ、「ハイペリオン」からぶっ続けで読むといいと思うよ。
僕は食事や睡眠を見られるのが恥ずかしくて嫌いです。

一緒に食事をするのならともかく、そうでない人に食事中の姿を見られたくない。店舗勤めなのですが、奥にいても、うっかりお客さんに食事姿を見られた時とか、非常にいやです。ですから、来客時には食事を中断して平静を装います。

また、何を食べているのか気にされるのも嫌です。僕が何を食べようとよそ様には関係ないだろう。

食事はとてもプライベートな行為だと思います。でもこれは個人差があるようで、上司などは、僕ほど気にしないみたいです。

睡眠も、プラーベートな領分に属します。僕は眠るのは好きで、夜も割合早く布団に入ります。寝付きもいい。でも学生時代から、同級生と深夜に集まってお酒を飲んでいる時とか、たいがい最後まで起きて飲んでいた気がします。お酒には弱くてすぐに酔っちゃうくせに。

人前で眠るのが嫌なんですね。
「とりぱん」9巻を読んでいたら、すそが広めのズボンは楽ちん、てな描写があって違和感を持ちました。むしろすそは絞ってある方が歩きやすい。

僕はユニクロのスキニージーンズを愛用しています。ベルボトムと違ってすそが絡まないので、歩きやすいのです。ユニクロの濃い色の服は、染料の性質なのかすぐに赤焼けするけど、デニムは大丈夫そうです。


いつの間にか記事数が100を超えていました。この記事で129回目の投稿です。
貴志祐介
講談社ノベルス

ポストアポカリプスもの。1000年後を舞台に、呪術と化け物に囲まれて暮らす全体主義的社会を描くのだから、どこかで破滅を経ていることは容易に想像ができる。

抑圧された青少年の成長譚であり、異形の世界を巡る冒険譚でもあり、暗黒の歴史を明かしてゆくミステリでもある。

反転

暗黒時代を記録しているのは、獣に擬態したアーカイブ端末。これは超ハイテクノロジーの集積体で、一体一体がそのまま図書館となっている。それの語る暗黒の歴史には胸がむかむかすること請け合いである。

でもそれは、世界の逆転を幻視する、SF読者にとっては至福の読書体験でもある。

エントロピーが収束したかと思うと拡散し、解かれつつある謎が再び隠され、カオスに飲み込まれていく。延々と続くカタストロフ描写は長いとも思ったが、読み終わってみると必要だったのかなとも思う。なかなか読み終わらないのが魅力の小説、と云うのも確実にあるわけだから。

宇月原晴明
中公文庫

遠く異朝をとぶらえば
近く本朝をうかがうに

廃帝、と云う言葉にロマンを感じる。廃された帝。ちゃいされた帝王のことである。廃太子の言葉もある。皇太子がちゃいされた状態のことである。

ロマンなんて言っていられるのは僕が部外者だからであり、本人にとってははらわたが煮えくり返る思いであろう。実際、本書終章の後鳥羽院は日本の大魔王として有名である。恨みのかたまりだ。

再びこちら側に視線を移せば、だからこそ面白い題材と云うことになる。うらみも悪意も感情もない、安穏とした人物は、まったく魅力に欠ける。こう云う人間はサイコキラーにされるのが、小説の作法である(でまかせ。偏見)。

マルコ・ポーロの遺物を軸に、中国、日本の悲運の帝の物語。美しくも惨めに滅びてゆくあまたの王朝。これは先だって紹介した「安徳天皇漂海記」に連なる作品である。続けて読むと、面白さが倍増する。
ふと思ったのですが、僕は音楽の出だしは覚えていても、終わりが分からないのです。さんざん聴いたバッハのコンチェルトでさえもそうなので、あまり聴いていない曲はなおさら分かりません。

部屋でオーディオを聴くわけではなく、車のカーステレオで聴くことが多いので、なおさら覚えませんよね。

サティのピアノ曲に「ナマコの胎児」があるのですが、このラストは、なかなか終わらない交響曲を皮肉っているようです。

ジャン ジャジャン ジャン ジャジャン ジャーン ジャン ジャン

てな具合で終わりません。いや終わるんですが、なかなか終わらない(笑い。
谷甲州
早川文庫

認識(ブッダ)とは何か。法(ダルマ)と智慧(サンガ)の統合は可能か。可能だとすれば、その方法を具体的に説け。また曼荼羅とは何か。さらに須弥山とは。世界を構成するものは何か。あるいは世界を再構成するための方法を解き明かせ。


いやはやすごい問いである。この本にはこの問いに対する答えが書かれている。著者はあとがきで「アインシュタイン以後の宇宙論を仏教的な世界観で再構成できるだろうか」と書いている。

山岳冒険仏教小説、というと夢枕獏(この本でも解説を書いている)を連想するが、情報の密度が違う。これは良質の情報SFでもある。

情報をモチーフにすると谷甲州は抜群に上手い。

また読みたくなってきた。近いうちに読み返すことになるだろう。
諸星大二郎
集英社文庫

これも広い意味ではポスト・アポカリプスものですね。太古の周王朝の夢を求めて、孔子が中国中を旅する話です。

反転

陰陽五行説や視肉などの古代ガジェットが(偽)科学的に解釈され、幻想的かつSF的な世界が現出します。周王朝は孔子の理想とするもので、それがハイテクに支えられた国家だとしたら。なんだかわくわくする設定ではないですか。

中国深南部の蜀の国、いまでいう四川ですが、僕はこの地方に惹かれます。中原とは異なる古い文化があり、異国ですね。この本でも孔子は四川を訪れ、太古の文化に触れます。


SFと幻想が渾然一体となり、広くインドから日本までを視野に入れ、めくるめく世界が現出します。おすすめ。