人気ブログランキング |

「パズラー」

神林長平
ハヤカワ文庫「プリズム」収録

この本の前半は読み進めるのがつらかった。描写が入り混じり、何が事実で何が幻想かよく分からず、骨が折れた。ようやく面白くなるのは操色師が登場する「ヴァーミリオン」に至ってからである。

今日表題に選んだ「パズラー」は本連作のクライマックスである。不思議な遊園地SOWランド(センス・オブ・ワンダーランド?)における追跡劇。と書くと陳腐だが、その陳腐さを越えたところに神林の凄さがある。

SOWランドは広大なロールプレイ空間で、客は園内通貨「円」を買い、「東京」でのくらしを疑似体験する。

現実と幻想の垣根を軽々と飛び越える、神林ならではの舞台装置だ。

思えばこの手の設定は神林のメインテーマとも言えるもので、古くは「あなたの魂に安らぎあれ」から連綿と書き継がれている。

「パズラー」の面白さは、仮想都市SOWランドの中に、さらに入れ子のようにおもちゃの都市を設定したことであろう。もう、何が現実なのかさっぱり分からない。SOWランドの外は、上空に浮かぶ制御体に管理される"現実世界"。ところがここも、連作を読めば判るように狂っている。


狂気の連鎖。狂気の入れ子。「過負荷都市」とは異なり、真の恐怖がここにある。
by tomoarrow | 2010-11-29 07:28 | 書物について | Comments(0)