「落盤」
河出文庫「アセチレン・ランプの夜」収録
この本はランプが登場する話を集めたアンソロジーである。手塚キャラは俳優のように現れるので、こういう企画が出来るのだろう。
「アドルフに告ぐ」のランプとハムエッグは怖かった。この二人はそもそも悪役で、特にランプの造形にはぞっとすることが多い。またハムエッグにくらべて役の幅が広く、ほろりとする小善人をやらせても上手い。
本書でもブラックジャック「ゴーストタウンの流れ者」や七色インコの「俺たちは天使じゃない」が収録されていて、両方ともしみるいい話である。
今回の表題である「落盤」では小悪党を演じていて、濃密な心理描写が面白い。どこかで読めるのか分からないが、見つけたらぜひ読んでいただきたい好編である。