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「弦楽器のしくみとメンテナンス マイスターのQ&A」

佐々木朗
音楽之友社

バイオリン製作技術者、佐々木朗氏のウエブサイトに掲載されている文章をまとめたものですが、本のかたちになると読みやすさが違いますね。さて肝心なのは内容です。

バイオリンと言うと神秘的な印象がつきまといますが、この本ではそれをばっさりと切って捨てます。

http://www.sasakivn.com/werkstatt/qa/strad.htm
ストラディヴァリとは魔法の楽器でも何でもありません。「単なる素晴らしい楽器」なのです。この言葉は何もストラディヴァリのことを見下していっているのではありません。私の最大級の賛辞と思ってください。

一般的にストラディヴァリを表現する言葉として「神秘的」、「科学では説明できない」、「これ以上の物の無い」・・・・等々の言葉が使われます。しかし私はこれほど安っぽい表現は無いと思っています。それではストラディヴァリに対して失礼にあたるでしょう。

というのは、もしもストラディヴァリが現代に生きているとしたら、彼は「神秘的」と言われても嬉しくもなんともおもわないと思うのです。「とても素晴らしい技術・・」という言葉こそが、何もストラディヴァリだけに限らず、我々技術者にとっての最大の誉め言葉なのです。

(略)

「音さえ良ければそれでよい」と考えられていたヴァイオリン製作において、徹底的に手抜きしないで「精度の高い楽器」を作り続けたのがストラディヴァリだったのです。事実、彼の楽器は当時から素晴らしい楽器として評価されていたのです。

現在博物館などにおいて、ストラディヴァリと同時代の3流のヴァイオリンをたまに見ることができますが、その作りの酷さには驚いてしまいます。


けだし至言です。技術者は客観的に物事を見れないと務まらないのです。佐々木さんが技術者、制作者であるから言える言葉でしょう。僕もピアノ調律の仕事をしている技術者ですが、技術を褒められるのが一番嬉しい。

この本では、楽器本体は言うに及ばず、弓の性能や、肩当てやあご当てに付いても、丁寧に説明してくれます。また、いわゆる楽器の価値や、オールド楽器と新作楽器の違いなど、曖昧に済ませがちな部分にも触れています。

弦楽器について、感情的にならずにオカルトに逃げずに、愛情を持って接する素晴らしい本です。楽器をたしなむ方もそうでない方も、ぜひ読んで欲しいな。
by tomoarrow | 2010-09-27 07:51 | 書物について | Comments(0)