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「廃帝奇譚」

宇月原晴明
中公文庫

遠く異朝をとぶらえば
近く本朝をうかがうに

廃帝、と云う言葉にロマンを感じる。廃された帝。ちゃいされた帝王のことである。廃太子の言葉もある。皇太子がちゃいされた状態のことである。

ロマンなんて言っていられるのは僕が部外者だからであり、本人にとってははらわたが煮えくり返る思いであろう。実際、本書終章の後鳥羽院は日本の大魔王として有名である。恨みのかたまりだ。

再びこちら側に視線を移せば、だからこそ面白い題材と云うことになる。うらみも悪意も感情もない、安穏とした人物は、まったく魅力に欠ける。こう云う人間はサイコキラーにされるのが、小説の作法である(でまかせ。偏見)。

マルコ・ポーロの遺物を軸に、中国、日本の悲運の帝の物語。美しくも惨めに滅びてゆくあまたの王朝。これは先だって紹介した「安徳天皇漂海記」に連なる作品である。続けて読むと、面白さが倍増する。
by tomoarrow | 2010-09-14 07:06 | 書物について | Comments(0)