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「安徳天皇漂海記」

宇月原晴明
中央公論社

悲劇の壇ノ浦から
陰謀渦巻く鎌倉
世界帝国元
滅び行く南宋の地へ

海を越え、
時を越えて紡がれる
幻想の一大叙事詩

反転

これ面白いですよ。前半の老人語りは一見退屈ですが、後半のマルコポーロ編は実にいい。これは前半が後半に取り込まれる一種の枠物語なのです。おぼろげな記憶にある前半のモチーフが目眩を起こすほど不思議に絡み合い、ほどけつつまた絡まりつつ、いろいろと分からないまま終わります。

そして、タイトルから連想されるのは当然「高丘親王航海記」ですよね。澁澤龍彦の名著です。宇月原のあとがきでも言及されているし、篇中にも高丘親王は登場します。時代が違うのに? それこそがアナクロリズム。

マルコポーロが異国の町を語る場面があるのですが、そこはまさしくカルヴィーノの「見えない都市」そのもの。まったく愉快痛快です。

by tomoarrow | 2010-08-25 07:22 | 書物について | Comments(0)