人気ブログランキング |

「アイオーン」

高野史緒 著
早川書房

人工衛星を打ち上げるほどの科学技術を誇った古代ローマ帝国の没落後、中世世界は暗黒時代にあった。物質の悪意により生まれる、虚弱児や畸形。蒙昧な政治。

歴史に現代のハイテクを持ち込むのは高野史緒の手法である。「ムジカ・マキーナ」ではブルックナーとシンセが、「カント・アンジェリコ」では、カストラートのチャットが描かれている。

本書「アイオーン」でも当然、現代的ハイテクノロジーが外挿される。

十字軍やイスラム社会。イングランドのマーリン。キリスト教公会議。謎に満ちた東洋。中世の闇は闇のまま、神秘思想がテクノロジーによって再解釈され、グロテスクに融合し、また解体される。

本来の意味を失ったガジェットが奏でる不協和音。

幻想文学と呼ぶには、いささか静謐さに欠けるが、非常に面白いSFである。おすすめ。
by tomoarrow | 2010-06-13 06:51 | 書物について | Comments(0)