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「原典 ユダの福音書」

日経ナショナル ジオグラフィックから刊行。

無教養な無神論者の僕にとって、ユダは使徒の中で異彩を放つダークヒーローである。金入れを預かるようなインテリが師を裏切るのだ。区別もつかないその他大勢の使徒に比べるべくもない、なんとカッコいいことか。そのユダの名を冠した福音書、否が応でも期待が高まるのである。

福音書の本編には注釈が多く、また独特の文体は詩を思わせることもあって、正直あまり頭に入らなかった(苦笑。僕が面白く読んだのはバート・D・アーマンによる、グノーシス主義と「ユダの福音書」の関わりを解説した章である。

グノーシス主義については、原始キリスト教の一派で、異端とされていたことくらいしか知らなかったので、非常に興味深かった。なんでもグノーシス派によれば、この世界の創造主は唯一神ではなく、全知全能でもなく、下級の劣位な神なんだそうだ。そして、世界は宇宙の失敗作なのだから、責任を神に負わせることは出来ない。救済は、この世界と物質の牢獄から逃れる方法を学んだ人だけが得られる。

それはたしかに異端である。解脱して輪廻転生から逃れ、完全な消滅を果たそうとする仏教にも通じるものを感じる。

以下、ものすごく要約して書いてみる。
グノーシス派のひとつ、カイン派は、ユダの裏切りを、イエスをこの世から解き放つ行為であって、むしろ賞賛されるべきものだと考えた。イエスは死にたがっていた(つまり、この世の牢獄から逃れたかった)のだ。
「ユダの福音書」によればユダはイエスの思想を理解した唯一の使徒なのである。

自殺願望の師と、うすのろな取り巻きたち。唯一、師が心を許せるエキセントリックな腹心。かれは仲間を裏切って師の望みを叶える。

わああはっは。愉快痛快、僕はこういう異端が大好きだ。
by tomoarrow | 2010-06-01 07:06 | 書物について | Comments(0)