大数仮説 2

ここで、マクロ時間とミクロ時間は、一致しない、というディラックの大胆な仮定を考えてみます。天体の運動はニュートンの運動方程式で表わされます。この法則にはGが含まれますが、原子の組成、構造を表す定数は入りません。

逆に原子世界の関係式には、基本的に重力定数Gは含まれないらしいのですね。つまり、両者が別個の独立した現象と考えることも、可能。

ミクロ時間で宇宙のはじめから現在までを考えてみましょう。時間が下るにつれて万有引力定数が減少するから、太陽から地球に及ぶ引力は徐々に弱くなるはずです。つまり地球の公転速度はだんだんと遅くなる。

この遅れと、原子世界の時間を比べます。マクロとミクロは無関係なのだから、過去にさかのぼるにつれてマクロ時間が速くなるとすれば、ミクロ時間は相対的に遅くなります。つまり、昔ほど、原子核の周りの電子の振動は、遅くなるのです。

たとえば非常に遠方からくる光を想像してみましょう。遠方の光は、過去に発せられたものです。つまり、ミクロ世界がゆっくりだったのだから、放出された光の波長は長くなる。なんと、赤方偏移が説明されてしまいました。

また、ミクロ時間で宇宙の年齢がゼロだった時のことを考えます。時間とともに物質が生成されてきたのだから、可視宇宙にはほとんどなにも、物質がなかったと想像できます。でもミクロ世界の時間をさかのぼりながらマクロ時間を見ると、地球の公転周期は昔ほど短くなるはずです。

もし仮に、宇宙の最初から地球が太陽の周りを公転していたとしたら、ミクロ時間のt=0(宇宙の始まり)のときまでに、地球は太陽のまわりを無限回まわることになるのです。マクロ的には無限の時間が経ったことになる。宇宙が無限の過去から無限の未来に続いているように見えるわけで、ビッグバンはなかったと結論されます。

この稿は「宇宙論が楽しくなる本」(別冊宝島)収録の、鹿野司さんのエッセイをもとにしています。ほぼダイジェスト。
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by tomoarrow | 2012-05-25 07:00 | モチーフについて | Comments(2)
Commented by 御光堂 at 2012-05-25 09:01 x
プランク長さ以下の極小スケールでは通常の意味での時間や空間の意味が成り立たなくなり、その虚時間の領域では実時間tに対応するのは1/tになる、という話を何かで読みました。
そうなれば時間0に対応するのが時間1/0すなわち無限大の時間だから永遠となります。
Commented by tomoarrow at 2012-05-26 07:48
その極小世界では、実時間1に対して虚時間1/1、同2に対して1/2、とだんだんに遅くなるんですか?

御光堂さんも、どこかで同じ、大数仮説をご覧になったのかもしれませんね。