傭兵のロジック
抜粋引用
日本には死刑囚がおよそ100人居る。彼らの中から放射線の中で作業する決死隊を募るのだ。そんな人間が居るのかという疑問は最もだが、一人は居そうである。
なるほど。でも、これは、死刑囚に対して全幅の信頼をおかないと成立しないのではないか?
傭兵はミッションの契約時に半金、終了後に半金という形で報酬を得ると聞いたことがある*。
ミッション前に全額を支払ってしまったら、傭兵はミッションに参加せずにトンズラする。逆にミッション後に支払う形式だと、傭兵としては報酬への不安がある。
相互の不信を前提とした支払い方法である。
たまごどんのアイデアの死刑囚を考えてみよう。死刑か、原子炉での危険か。選択肢はそれだけではない。逃亡、という道もあるのだ。自分が死に直面している状況で、他者を助けるために、さらなる危険を背負い込む必要はない。
一か八かの賭けで、原子炉に向かわずに、逃げるのではないか?
「死刑囚と原子炉のロジック」には、死刑囚側に「原子炉に向かうメリット」がないと成立しないと考える**。
この問いに対して、たまごどんは超絶的な解答(ちょっと大げさ(笑い)を出している。詳しくはたまごどんのブログの当該エントリを参照のこと***。
http://tamagodon.livedoor.biz/archives/51644334.html
*これが事実かどうかは分からりません。ですが、思考実験のひとつとして、今回はこの形式を採用しました。
**僕のこの記事が、非常にブラックなエントリであることは確かです。あくまでロジックの考察と云うことでご容赦願います。
***実はこの記事を掲載するにあたり、たまごどんご本人に了承をもらいました。その際に聞いたのですが、たまごどんも死刑囚の逃亡については考えたのだそうです。その結果、「死刑による確実な死」ではなく、放射線被曝と云う「不確実な死」を選択するのではないか、と結論づけたそうです。これが、僕が上に挙げた「死刑囚が原子炉に向かうメリット」となるのでしょう。
ブラックな思考実験、読者諸賢はどのように考えるでしょうか?
南京大虐殺のときに、中国人が自分を埋めるための穴を掘らされるというシチュエーションがあったのら。その時の写真では、彼らは黙々と穴を掘っているピョン。おそらく、この穴を掘らされている意味は、実際に作業している彼らには分かっていたんじゃないかなとたまごどんは想像するのら。
ではなぜ彼らが掘り進めたかというと、掘っている間は確実な死から遠ざかっているためだと思うピョン。穴掘り作業を拒否すれば直ちに処刑なのに対し、穴堀り作業は「生」が許されている。その生がほんの1時間であってもね。
僕は、作業部隊を原子炉からある程度離れた所で解放し、自分たちで原子炉に向かわせ、作業をしてもらうような作業風景を考えていました。道具や機材を運ぶために、トラックを運転して乗り付ける必要があるでしょう。
そんなことを作業部隊が自主的にやるかな? という疑問ですね。
少なくとも、逃亡を防ぐための銃撃隊が取り囲んでいる図は、想像できなかった。むやみに近づいたら、その人たちも危険なわけですから。
決死隊に、超高度な原発制御作業が可能なのか? という疑問は禁止(きっぱり。
外れずと言えども的を得ずのコメントかも知れませんが。
創元推理文庫に『コンラッド消耗部隊』というシリーズがありますね。毎回必ずチームから消耗人員(つまり死者)が出るというフィクションでは希なシリーズです。英語ではexpendables。最近同名で全然別の映画が上映されてるようですが。
http://ssearch.jp/books/wkeysearch.php?keyword=%83R%83%93%83%89%83b%83h%8F%C1%96%D5%95%94%91%E0&page=1
ちなみに任務場所が未開拓惑星なので逃亡のしようがありません(..;)。
僕も、「戦闘妖精・雪風」(の第3部)を読んだ直後だったので、この記事を思いつきました。よく出来たフィクションは考察のモチーフになりますね。
あくまで理屈ですが、正規兵は、おそらく生存競争に勝ち残ればいいと思うんですよ。自軍が負けても、捕虜に対する条約もあるし。
でも傭兵は、自軍が負けたら何の保証もないわけで、正規兵よりも厳しい条件で闘うのではないでしょうか。かりに捕虜になっても、雇い主側に無視されることもありそうだし(僕の推測です)。
そう思うと、原子炉決死隊は傭兵以上の悪条件だなorz
「コンラッド消耗部隊」は未読ですが、ちょっと気になりますね。古書店で、探してみます。
大西洋横断を思い出しました。
大西洋の西のかなたへ行くと、地球から
落っこちるかもしれないと思われていた当時、
コロンブスの最初の航海の乗組員には、
かなりの数の死刑囚が混じっていました。
ようするに、「コロンブスに同船するなら
死刑を免除してやる」という条件をつけたのね。
この場合、船に乗ったら最後、
途中で逃げることはできないので、
「一か八かの賭け」をする余地はないんだけど。
コロンブスの航海にだって、航海の目的に共感して協力を惜しまなかった死刑囚が居たんじゃないかと、たまごどんは想像するピョンよ。
コンラッド消耗部隊は未読だピョン。見かけたら買ってみようかなあ。
YUKIKAZEだってのもはっきりと知らず・・オイオイ(~_~;) 名作だ。
このエントリは盛況ですね。
>たんぽぽさん、たまごどん
コロンブスの船には、どれくらいの割合で囚人が乗っていたのでしょうか? 船長以外が全部囚人であれば、反乱を起こして逃げることも可能だっただろうし。囚人さんだってわざわざ乗せてゆくくらいだから、操船技術くらいある人でないと仕方がないと思うんですよね。
コロンブスは、無事に西インド諸島に達して帰ってきたんだから、僕がどうこう言うのも変なのですが(笑い。
「雪風」シリーズはいいですよね。除雪隊の省エネに関するくだりなんて、今の節電状況にも当てはまりそう(除雪車がいくら節約しても、ジェット機が飛べば、2,3秒でそれくらいのエネルギーを消費してしまう。ご家庭でどんなに節電しても、大規模施設が煌煌と灯りを付けていたら・・)。
生存のための利益を得るために、どれだけのリスクを払うか、それがこの思考実験のポイントだと思うんですよ。犯罪も軍隊生活もひとつの手段(リスク)であって、目的(利益)ではありません。
でもそれを、囚人が合理的に判断できるのか? という要素も加えると、混迷の度合いが深まるorz 論点を整理した方が良さそうですね。
僕は「反乱、逃亡する可能性がある者は皆そうする」との思い込みが強すぎるのです、きっと(苦笑。