「方舟さくら丸」
新潮文庫
核戦争のシェルターとして、採掘が終了した廃坑を利用しようとする引きこもり男。かれは方舟の乗船券を手に、街に出ます。
テーマは深遠そうで、舞台装置も大掛かり。でも演目が妙に矮小で面白い。多分、安部公房はわざとやっているのでしょうね。
なにしろ、シェルター内でのドタバタはほとんどドリフ。核戦争も関係なくなり、ただのスラップスティックが展開します。
本当に不思議で面白い小説です。安部公房大好き。
シリアスな考察を読みたい向きには、姉妹編と言うか補遺と言うか、「死に急ぐ鯨たち」(新潮文庫)をどうぞ。