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「カルトの子」

米本和広
文春文庫

平凡な家庭にカルト宗教が入り込んだ時、こどもはどんな影響を受けるのだろうか。親からの愛情や関心を奪われ、集団の中で精神的、身体的虐待を受けて心に深い傷を負った子どもたち。

これはいやーな本です。親がカルトにはまり、その犠牲になった子供たちが詳細に描かれています。取り上げられているのは、エホバやヤマギシでの体罰容認。オウムの洗脳。統一の強制結婚。どれも不気味です。いや、不気味なんて言葉では甘いですね。虐待です。

たとえば、P125から紹介されているエホバ信者による虐待死、これは体罰による傷害致死なのですが、全くひどい話です。

93年の11月。広島での事件です、4歳の子供をゴムホースをムチ代わりにして血がにじむほど叩き、そのあと家から閉め出した結果、翌朝に息が止まって発見されたのです。この事件について、広島のエホバの会衆では、
「組織と教えは正しいが、あの人が個人的にやりすぎたんだ」
と話し合いがなされただけだったそうです。

その後、ムチがゴムホースではなくアクリルの棒に変わったそうです。アクリル棒はゴムホースほど威力はありませんが、よくしなり、思いっきり叩くと息が止まるほど痛く、ダメージもミミズ腫れ程度、折檻にはちょうどいいそうです。

ただし、このような激しい折檻は姿を消しつつあるとの記述もあります。

暴力肯定はヤマギシも同じです。

「殴られるのは日常茶飯事」
「鉄の棒で頭を殴られた」
「倒されて三十発くらい殴られた」

ヤマギシの子供たち相手に実施された、こんな恐ろしいアンケートが掲載されています。

2000年に単行本が出版され、この文庫は2004年のものです。今、カルトによる虐待はどういう具合なのでしょうか。この本はぜひ一度読んでいただきたいです。初読時、真の恐怖を感じました。
by tomoarrow | 2010-08-28 07:55 | 書物について | Comments(0)