「アイヴォリー ある象牙の物語」
早川文庫SF
時は悠久の未来。
遥か昔に歴史から姿を消した一組の象牙の探索行。象牙の軌跡を探る調査局員。とはいっても、宇宙をまたにかけた一大冒険ストーリーではない。この小説の本編はコンピュータが報告する、象牙にまつわる物語である。つまりはフレームストーリーだ。
舞台は歴史の闇の中である。コンピュータであらゆる情報を検索し、象牙の記録を探ってゆく。全宇宙の博物館の収蔵品目録やオークション記録、保険会社の扱い品目。船舶の輸送記録など。
長い歴史の中で、象牙がたどった神話的とも言える運命が、そこに現れる。
調査局員はコンピュータを操作することであらゆる情報を手に入れる。まるでクルミの中の世界である。卓上のマシンは世界そのものなのだ。
めくるめく幻想がそこにある。おすすめ。